6人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当?」
「ああ。今、お兄ちゃんが殺してやる」
白くて、細い彼女の首をゆっくりと絞めていく。呼吸ができなくて苦しいはずなのに。
「へへっ、やった」
彼女は笑っている。小さな子どものように可愛らしい笑顔をつくっている。
「ご、めんね。お兄、ちゃん」
「謝るな。今まで、辛かったよな」
「ううん。お兄ちゃんと、一緒だっ」
また意識を失ったようで、彼女が眠るように目を閉じていく。その首から微かに感じている生きようとする動きもとまって。
「カナデ!」
そんな彼女を呼ぶ声とほとんど同時にぼくは顔を殴られた。脳が揺れ、意識を失いそうになりながら考えていたことは。
部屋の扉を開けっぱなしにしておくべき。さらに、みぞおちを殴られ、ベッドの上から転げ落ちていく。
まだまだ殴り足りないとでも言いたそうな顔で、その男は床に倒れているぼくを見下ろしていたが。
ベッドの上の彼女の介抱が先だと判断したらしい。
確かに、ぼくの意識はもうなくなりかけているので、黒髪の男の判断は正しか。
目を覚ますと、病院のベッドの上だった。
あの、カシハラくんと同じ目になっていたガードマンさんが今さら、こんなことをする訳がないので。
「また、死ねなかったのか」
眼帯をさせられているようで右半分が見えづらい気がする。そちらのほうに顔を動かすとパイプ椅子に座っている兄さんがうとうとしているのが。
起きたようで目を大きく開いている兄さんがこちらを見ていた。
「ん、おお。カナデ。気がついたか」
ナースコールを押しながら、うれしそうにしている兄さん。
「兄さんが助けてくれたの?」
「ああ。とは言えないか、カナデがこんな目に遭うまで助けられなかったんだからな」
「そうだとしても、兄さんは助けてくれたんだから。自信をもって良いんだと思うよ」
「それじゃあ、ちゅー」
「その冗談で今回あげるつもりだった兄さんポイントがなくなりました」
相変わらず、カナデは照れ屋だな。と笑いつつ、兄さんが近くの棚の上においてあったフルーツセットからナシを手に取っている。
「カナデはナシが好きだったよな」
「んー、きらいではないかな」
そんなことよりも手を震わせながらナイフを使わないでほしかった。それを見ている、こちらのほうが心臓に悪い。
なんとか、手を切らないで皮をむくことができたナシを兄さんに食べさせてもらう。
最初のコメントを投稿しよう!