6人が本棚に入れています
本棚に追加
「みや、ミヤシロさん。その、おはようございます」
「もう昼だけどな。まあ、おはよう」
ベッドの横にある棚の引きだしからタオルを取りだしているミヤシロさん。
「これで顔を拭いたら? 汗がでてるぞ」
「ありがとうございます」
涙しかでてないような気がするけど、ミヤシロさんなりに気を使ってくれているのかもしれないな。
「あの、ミオンさんは?」
「ん。いないけど、おれ一人だし」
「あの、ミヤシロさんがわたしのお見舞いにきてくれたってことですか?」
「もじゃもじゃしている頭以外にどんなイメージをされているのか知らないが、普通じゃないか」
「まあ、そうなんですけど」
どこかケガをしていて、ここに入院をしているのかとも思ったがそんな感じでもない。
多分、ミヤシロさんがもってきてくれたんだろう。空だったはずの花瓶に知らない花が生けられている。
「本当はツチウラのほうが良かったのかね。悪夢を見るくらいに、今のオツノは精神的に弱っているみたいだし」
ミヤシロさんが口にしていることが分からなくて首を傾げていると。なぜか、全く意識をしないで彼の服の袖をわたしは指先でつまんでいた。
「どうして、ツチウラくんが?」
「うそ。って感じじゃなさそうだな」
説明しづらいことなのか、ミヤシロさんが困ったような顔をしている。と言うよりは、なにかを迷っているのかな?
「ツチウラくんの話はさておき。わたしが涙をながしていたことは、だまっていてくれませんか。特に、ミオンさんには」
「そんなに心配をしなくても、それは誰にも言わねーよ」
うそっぽく笑っているが、ミヤシロさんの目つきはどこか真剣で。本当に、誰にもそのことを言わないとなんとなくわたしは確信をしていた。
「にしても、あのオツノが涙をながすくらいにこわい夢を見るなんて。この病院のうわさは本当なのかもしれないな」
「病院のうわさ、ですか」
「ああ。ま、入院しているやつをこわがせるのもあれだから。簡単に説明するが、かなり前に殺人があったらしいんだよ」
「はあ。そもそも病院なんですからね、それなりに人死にはでているものかと」
「オツノらしい見解だな」
かなり色々な言葉を飲みこんだようにミヤシロさんは一言だけ、そう口にしていて。
「おれは、オツノのそんなところが好きなんだろうな」
そんなことを続けて言っている。
「わたしも、ミヤシロさんは好きですよ」
「それは人間としてだろう?」
「そうですね。宇宙人として、ミヤシロさんを見たことはないですね」
「オツノはそんな風にうそをつくよな」
最初のコメントを投稿しよう!