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人間は複雑そうに見えて、とてもシンプルですからね。お腹が空けば音が鳴り、病気になれば身体が痛くなったりします。
だから、その反応を分かってあげれば良いんだと思いますよ。とミドリさんがまとめている。
「さて、休憩はここまでとして。気分転換に中庭にでもいきましょうか。まだ眼帯をしているので転ぶと大変ですし」
「いえ。もう慣れたのでおそらく平気かと。それに一人で色々と考えたいので」
「ははっ、これこそ野暮でしたね。まだ身体のダメージは完全に回復した訳でもないのでそれほど動き回らないように」
なんて看護師らしい台詞を口にしたミドリさんは病室をでていってしまった。
先ほどの告白のことを思いだしてしまったからか、なんだか頭の中がぐにゃぐにゃしている。お酒を飲んで酔っ払っているように、身体も熱くなっていて。
手段が、強引だったのは間違いないけど。ミヤシロさんの思いみたいなものが本当なのは理解できる。
そう言えば、兄さん以外の男性にあんな風に告白されたことがなかったな。だから、今もにゃもにゃしているんだろうか。
「どうかされましたか?」
中庭におかれている、屋根つきのベンチに座っていると看護師さんが声をかけてきた。
よく見ると、先ほど廊下ですれ違った看護師さんだな。その時に、なんだか不思議そうにしていたから気になり、ついてきてくれたのかもしれない。
それにしても、わたしの担当をしてくれている看護師さんもだが。この病院では派手な髪色にしないといけないってルールでもあるんだろうか。
「いえ。この病院の看護師達には髪色を派手にしなくてはいけないってルールは一切ありませんよ」
「えっと、もしかして前職が占い師だったりとかしますか?」
「さあ、どうでしょうね」
そう軽く笑うと、看護師さんがわたしの隣に座った。頬の熱がなくなってきたし、そろそろ病室に戻ろうと思っていたのにな。
「なにか悩みごとでも?」
「ええ。ま、男女関係のことであったんですが。明日、友人に相談をしようと考えがまとまりました」
確か、明日はミオンさんが着替えとか色々ともってきてくれる日だったはずだし。彼女さんだった人に話すのもどうかと思ったけど他に相談をできそうな相手もいない。
それに普通の女の子っぽいことだからな。
「そうですか。それは安心しました」
「安心、ですか」
別に、変な言葉でもないが。なんだか少しニュアンスのようなものが違う気がする。
「わたしの勘違いだったらそれで良いんですが。今みたいな話だと、それは良かったですね。と言うのが普通じゃないですか?」
まだ動揺していたのか、らしくもなく頭の中に浮かんできたまま質問をしてしまった。
「鋭いですね」
そう口にする前になにかを言いかけたように唇が動いた気もしたが、わたしの見間違いだったんだろう。
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