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ゴールデンウィークは殺人鬼とクルーズ船 前編
眠っている間の意識は、どうなっているのだろうか。目を覚ますたびに思ってしまう。
それは一種の死に近い感覚。真っ暗な中で自分の精神だけが、たゆたう時間。わたしはその感覚が好きだ。そのことをウネメ先輩に話すと。
カナデちゃんは寝るのが好きなんだね、と言われてしまった。
確かに寝るのも好きなんだけど、なんだかもどかしい気分だな。
カーテンの隙間から、差しこんでいる朝日が顔に当たった。陽光から逃れようと身体を動か。なにかが巻きついてるようで重たい。
「んー、おはよう。カナデちゃん」
お腹をまさぐりながら、ウネメ先輩が耳もとで挨拶をしている。巻きつけている両腕にも力を入れてきていた。
背中にくっついているからか、先輩の体温を感じる。でも、なんだか手つきがいやらしいような。
「おはようございます。ウネメ先輩」
くすぐったがっていることを気づかれないように、平静に挨拶を返すと。
「相変わらず、つれないな」
まさぐるのをやめ、先輩はベッドから抜けでた。布団の外は寒いらしく、近くにあった毛布を頭から被っている。魔法使いみたいに見えてしまうのは、わたしが魔法少女を好きだったからかもしれないな。
「トーストとご飯。どっちかな?」
ベッドの上で寝転んでいるわたしのほうを見ながら先輩が聞いてきた。
「睡眠」
「本当に好きだね。それじゃあ、トーストで良い?」
「お願いします」
寝転んだままで目を閉じると、ひんやりとした感覚が身体を包みこんでくれた。
「いただきます」
豪勢な朝食の目の前でわたしは合掌した。白いちゃぶ台の上に置かれている、食パンにイチゴジャムを塗りたくり、かぶりつく。
「それで、今回はどうだったんですか? ウネメ先輩」
口の中の食パンを飲みこんでから、そんな質問をすると先輩が眉をひそめた。
「カナデちゃん。前にも言ったけど、ウネメ先輩って呼ばないの。男みたいに聞こえるでしょう」
ベッドの上で、わたしのお腹を触っていた時は平気だったのにな。
自由にお腹を触らせたらウネメ先輩でも良いですか? って聞いてみたかったが悪戯をされる未来しか見えないのでやめておこう。
「分かりました。えっと、ウネメさん?」
「ミオンで良いって」
白いちゃぶ台を挟んで、向かい合うように座っている先輩が笑っている。
「ミオンさん」
言われた通りに呼んでみたが、聞こえづらかったのか、ミオンさんがこちらにゆっくりと近づいてきた。
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