第4話 邪魔だけはしないで

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 訝しげに眉根を寄せたエルザに対して、男はふわりと微笑んでみせた。  おもむろに、男はエルザに近づく。彼の着崩した白いシャツの襟元から覗く鎖骨が、妙に色気を帯びていた。 「ちょっと、いったいどうし」「お姉さん、がする……」 「……は?」 『ゥボァァアアアァァ!!』  男の発言の意味を理解する間もなく、別の場所から雄叫びのような奇声が町中にこだました。  エルザは瞬時にその方角へと顔を向けた。  それは最初にうめき声をとらえた方角とほぼ同じである。 ――こいつの気配に惑わされるなんて!  どうやら追跡の途中でまぎれこんできた男の気配に気を取られ、目標を見誤ってしまったらしい。エルザとしてはとんだ失態である。 「チッ!」  エルザは忌々しげに舌を打ち鳴らすと、目の前できょとんとしている男に向きなおる。  きょろきょろとしながら目をぱちくりとさせているこの男には、危機感というものがないのだろうか。 「仕方ないからついてきて! でも邪魔だけはしないで!」 「え!? ちょ、お姉さん!?」  そう言い捨てるや否や、エルザは声のしたほうへ向かって走りだした。  べつに男のことは置いていってもよかったのだが、一人にしている間に別のグールに襲われでもしたら面倒だ。上に知られたらなにを言われるかわかったもんじゃない。  特にアルヴァーは、隊長室で延々と説教を始めるに決まっている。 ――そんなのは御免よ。  あまり気は進まないが、連れていったほうが無難だろう。目に見える範囲にいてもらったほうが、万が一のときも対処しやすい。  急に駆けだしたエルザを追いかける男の気配を後方に感じながら、彼女は区域の奥へと向かっていった。
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