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少しひらけたその場所は、もともとは広場か公園だったのだろうか。いまとなってはどちらでも関係なかったが、エルザは足を踏み入れた場所の光景に目を見張った。
わずかに残る血のにおいとともに地面に転がるのは、いくつものグールの死骸である。
腐った肉体はどれも干からびた大地のようにひび割れ、カラカラに乾ききってしまっていた。
「死骸、だけ……?」
エルザは銃を手にしたまま、慎重に公園の奥へと歩を進めた。
目の前でぴくりとも動かないそれを、つま先で軽く蹴って転がす。
とたんに乾いた灰と化し風に流されていったそれに続いて、ほかの死骸も次々と形を保てずにぼろぼろと崩れていった。
気持ち悪く肌にまとわりつく生暖かい夜風が、血のにおいとともにすべてを暗闇へと連れ去ってしまう。
「どういうこと……?」
グールを殺せるのは、クルースニクの所有する銀製の武器か、もしくはヴァンパイアだけのはずだ。
しかし現在、この区域に派遣されているクルースニクはエルザひとりだけ。事前調査に訪れたチームは、昨日のうちに全員帰還している。
となれば、選択肢はひとつしか残らない。
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