第41話 お願いがあります

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「エルザが、、だろうな」  その言葉に、アリシアはおもわずダグラスを見た。  彼は横たわるギルベルトから視線をはずさず、じっと包帯の下の傷を見つめているようだった。 「ダンピールの能力、それ自体はヴァンパイアに比べればはるかに劣る。いくらヴァンパイア寄りになろうともな。だが……」ダグラスは一度言葉切り、わずかに息を吸った。 「ダンピールは唯一、ヴァンパイアに傷をつけることができるともいわれている」 「それが、お兄さまの傷の治りを遅くしていると?」 「おそらくな」  ダグラスはそれきり口を閉ざしてしまい、アリシアもまたなにかを考えこむように黙ってしまった。  兄のひたいに乗せた濡れタオルを手に取れば、冷たかったはずのそれはいつの間にか熱を蓄えていた。  深手を負ったせいなのか、ギルベルトの熱が下がらない。  それは彼の体力を消耗させ、いたずらに治癒力を奪っていった。  時折苦しそうに表情を歪める彼は、うわ言のように何度も何度もエルザの名を呼んでいた。  そのたびに、アリシアの胸は締めつけられるように痛む。 「……ダグ、あなたにお願いがあります」 「なんだ?」  ふと、兄のひたいににじむ汗をぬぐうアリシアの手が止まった。力なく離れた腕を、彼女は静かに下ろす。  うつむいた彼女の手の中で、タオルがくしゃりとしわを寄せた。  アリシアが勢いよく振り向く。  グリーンガーネットの瞳が、今にもこぼれ落ちそうなほどに潤んでいた。  それはまばたきの弾みで大粒の雫となって、次から次へと落ちていく。  小さく肩を跳ねさせながらも、彼女はダグラスのシャツをつかんで彼の腕にすがりついた。 「お姉さまを、見つけてっ……!」
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