第42話 おあつらえむきな雰囲気

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第42話 おあつらえむきな雰囲気

◇◇◇◇◇  町外れの林の中ほどあたり。  ルティスとアルヴァーは少数の隊員を率いて、不自然にひらけた空間を眼前にとらえた。  片手で数えられるほどの小屋が点在するその場所は、どうやら材木置き場のようである。  加工される前の丸太が積まれたままに残されており、風雨にさらされ朽ちようとしていた。  放置されてからずいぶんと経つのだろう。  周囲にヒトの気配はなく、昼間であるにもかかわらずどこか陰鬱とした空気が漂っている。  小屋も長いこと使われた形跡がなく、あたりは不気味なほど静まり返っていた。 ――ここまで生きているものの気配がしないというのも……。  目の前の光景に、ルティスは口を引き結んで目を細めた。  風化してひび割れた木枠。  劣化して剥がれ落ちた壁板。  割れた窓ガラスの破片が、小屋の内にも外にも散乱していた。 「なんつーか、おあつらえむきな雰囲気だこって」 「アルヴァー、無駄口をたたいている暇はないよ」 「わーってるよ。お前ら、配置につけ」  アルヴァーの指示に、隊員たちは静かに返事をした。  息を殺して足を忍ばせ、彼らは上官二人を残してそれぞれ小屋の前へと移動する。
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