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「……いると思うか?」
「……わからない」
アルヴァーのつぶやきに、ルティスは苔だらけの小屋のドアを見つめたまま答える。
数日前に東支部にもたらされた情報。
それは、『町外れの小屋にグールが棲みついている』というものだった。
一見すればただのグール退治の依頼である。隊長と副隊長が二人して出向く必要はない。
しかしその報告書の備考欄に記された一文が、二人にとっては無視できない内容だったのだ。
小屋の所在地はエッケシュタットの東端。
行方不明であるエルザが、最後に目撃された町と同じである。
これは偶然の一致だろうか。
わずかな可能性に賭けて、ルティスとアルヴァーはそろってこの地を訪れたのだった。
「アルヴァー、用意は?」
「いつでもいける」
銃を構えたルティスとアルヴァーは、朽ちたドアを左右からはさむようにして、小屋の壁に背をつけた。
半開きのドアのすきまを、湿った風がわずかに音を発して吹き抜けていく。
部下たちへすばやく目配せし、小さく首を上下させたルティスの合図で、アルヴァーは一気に壊れかけのドアを蹴破った。
ほかの小屋からも、次々と似たような音がこだまする。
舞い上がった土ぼこりが、キラキラと陽光を反射していた。
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