第43話 金髪のヴァンパイア

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第43話 金髪のヴァンパイア

「っエルザ!?」  おぼつかない足取りでふらふらと現れたエルザの姿に、アルヴァーはおもわず彼女の名を叫んだ。  行方不明となって数ヵ月。血眼になって探していた彼女の風貌は、想像していたよりもはるかにひどいものだった。  金糸のようになめらかな髪は無造作に乱れ、全身に浴びた返り血と土ぼこりが、白かったはずのスリップを汚している。  なにも履いてない素足と露出した腕に刻まれた、無数の小さな傷。  血が乾いて真っ黒に染まった細い指。  たったそれだけのことが、彼女のしでかしたことを物語っているようだった。 「ちっ、やっぱお前なのかよ……!」アルヴァーの吐息が、小さなつぶやきとなって喉の奥で響く。 「ルティス、その犬っころは任せた」  アルヴァーはオオカミに背を向けると、その場に立ち尽くしたままのエルザの正面に対峙する。  二人の視線は交わらない。 「さぁて、お前はだ? エルザ」  状況はけっして楽観できない。  ダンピールには、その血筋ゆえ暴走の可能性がある。  今のエルザにヒトとしての意識が残っている確証はなく、最悪の場合、彼女をこの場で殺さなくてはならなかった。
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