第46話 知らせておきたい情報

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 軽口をたたきながら昇降機を降りた二人は、まっすぐにエルザの収容されている牢へと足を向けた。  人払いされた地下牢は、シン……、と静まり返っている。  どこかでネズミでも駆けずり回っているのか、小さな足音が暗がりのほうから大きく反響していた。 「エルザ、調子はどう?」  片膝をつき、ルティスは鉄格子の向こうへと声をかける。  だがやはりエルザに反応はない。  意思のない瞳をぼんやりとひらいたまま、彼女はただ目の前の地面を視界に映しているだけだった。  だがルティスは、そんなエルザの様子に落胆するわけでもなく、ひとつ息をついて再び口をひらいた。 「きみに、知らせておきたい情報がある。これはまだ、本部にも報告していない案件だ」わずかに声のトーンを落としてルティスが言う。 「ヴァンパイアの棲みかを、発見した」  それは、本部に向かう直前に入手したばかりの情報だった。  彼はあえてその情報を本部へは報告しなかったのである。  ヴァンパイアの首と引き換えに、エルザの無罪を勝ち取るために。 「十日後、(イースト)支部で討伐に出る」  討伐任務から帰還した隊員からの報告に、ルティスが自分の耳を疑ったのは記憶に新しい。  逃げた手負いのグールのあとをつけた隊員は、あわよくばグールの棲みかを発見できればと考えていた。棲みかさえ判明すれば、敵を一網打尽にすることも可能だと思ったからだ。  そんな彼の目の前に現れたのは、ひどく廃れた古城である。  城門の前に、男がいた。
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