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第47話 俺たちはただ
「なっ!? お前っ! どうやって……!」
アルヴァーはおもわず声をあげた。
正礼装をまとう背の高い男と可憐な少女を従えて歩く、銀髪の男には見覚えしかない。
否、すべての元凶ともいえる男の登場に、ルティスも同様に表情を険しくする。
「悪いけど、上の連中には眠ってもらったよ。大丈夫。殺しちゃいないさ」
シルクハットのつばを軽く持ち上げて、ギルベルトはわずかに口元に笑みを浮かべてみせた。
「お兄さま、よろしいんですの? この二人も眠らせてしまえば簡単ですのに」
足を止めたギルベルトのうしろから、アリシアがひょっこりと顔を覗かせて兄を見上げる。
「彼らには、証人になってもらわなくちゃいけないからね」
「なにをするつもりだ」
ルティスのしぼり出すような声が、静かに地下牢に反響した。
その声に反応を示したのはアリシアで。
漆黒のゴシックドレスを揺らしながら二人に近づいたアリシアは、動けないルティスとアルヴァーに冷めた視線を送る。
そうしてふいっ、と体の向きを九十度変えると、彼女は目の前の鉄格子をにらみつけた。
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