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「お姉さまをこんなところに閉じ込めるなんて……!」
アリシアは、少々錆びた鉄格子をおもむろにつかむ。
次の瞬間、アリシアは一気に腕を引いてカギのかかった格子戸を強引にこじ開けた。
大きな金属音が、地下空間に響き渡る。
「お姉さま! ご無事ですか!?」
躊躇なく牢の中へと駆けこんだアリシアが、エルザの前に膝をつく。
「あぁっ、おいたわしい……! こんなもの、今すぐ外してさしあげますわ!」
そう言うや否や、エルザの手足を拘束していた鎖がアリシアの手によって引きちぎられる。
けっして細くはないそれが、重たげな音を立てて地面に落下した。
「ギル、こいつらはおれが引き受けよう」
「悪いね、ダグ」
インタフィアレンスの領域内ではあるが、本調子ではないギルベルトに対して彼らがそれを克服する可能性がないとはかぎらない。
万が一に備えて、ダグラスはルティスとアルヴァーの行く手に立ちはだかるようにして前に出た。
「お兄さま! 早くお姉さまをっ!」
急かすアリシアの声に、ギルベルトは牢の出入口へと足を向ける。
アリシアと入れ替わるようにして、彼は牢の低い出入口を身をかがめてくぐり抜けた。
「エルザ……」
ゆっくりとエルザの前に膝をつき、彼女の顔を覗きこむ。
しかしエルザは彼を見ようとはせず、ぼんやりと地面を見つめているだけである。
ギルベルトは一度目を伏せ、自身の牙をみずからの唇に突き立てた。
口の端から、まだあたたかい鮮血が滴り落ちる。
錆びた鉄のにおいが、つん、と鼻をつく。
「っ!」
感情の見えないエルザの瞳が、不気味なほどに大きく揺れた。
血に飢えたまなざしが、おもむろにギルベルトの姿をとらえる。
次の瞬間、エルザは両手を突き出してギルベルトに飛びかかった。
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