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何度もまばたきを繰り返す。
瞬く間に潤いに満ちていく瞳から、とめどなく涙があふれた。
「ギルっ……! ギル、ギルっ……!!」
ギルベルトが生きていた。
殺してしまったと思っていた彼が、生きて目の前に現れた。
エルザは彼の存在を確かめるように、必死で彼の体にしがみつく。
「遅くなってごめんね、エルザ」
ギルベルトは、泣きじゃくり嗚咽を漏らすエルザの頭を優しくなでる。
彼女の不安や恐怖が、少しでもやわらげばいい。
彼女が安心できるようにと、ギルベルトは震える小さな背中を力強く抱きしめた。
エルザの泣き声だけが、胸を締めつけるほどにみなの鼓膜を揺らす。
「……っ、……ふっ……」
「エルザ、ちょっとだけ眠っててくれる?」
わずかに体を離したギルベルトは、少しだけ落ち着きを取り戻したエルザとしっかりと目を合わせた。
エルザを不安がらせないように微笑み、手のひらでふわりと彼女の視界をふさぐ。
次の瞬間、全身の力が抜けたエルザは、その身をすべてギルベルトに預けていた。
規則正しい吐息と安らかな寝顔に、ギルベルトは安堵の息を吐く。
涙の跡が残る頬を優しくぬぐい、彼はずいぶんと細くなってしまったエルザの体を易々とかかえ上げた。
「てめぇ! そいつをどうする気だ!」
「その女性は、わたしたちの大切な仲間です。彼女は置いていってもらいましょうか」
エルザをかかえたまま牢をあとにしようとするギルベルトを、アルヴァーの怒声がさえぎる。
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