第49話 独占欲もほどほどに

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 その日の夜。ディナーを終え、みんなで二階のダイニングルームで団らんを楽しんでいたときである。  コーヒーを用意していたダグラスが、おもむろにギルベルトに声をかけた。 「そろそろ、エルザに話してやってもいいんじゃないか?」  ギルベルトの表情に、ふっ、と影が落ちる。  名指しされたエルザは何事かと案じつつも、ただならぬなにかを感じたようで黙って彼の言葉を待った。 「……お兄さま」 「うん、わかってる」  妹に促され、ギルベルトは深々と、息をひとつ吐き出した。  そうしてまっすぐに、正面のエルザに視線を向ける。 「エルザ、落ち着いて聞いてほしいんだけど」  そこに、いつものふざけた雰囲気はない。  刺すように静まり返る空気に、エルザは静かにうなづく。 「…………ベルンハルド」 「えっ?」  しばしの沈黙のあと、ギルベルトが意を決したように口をひらく。  静寂の中、彼の言葉だけが、やけに鼓膜に反響する。  つぶやかれたのは人の名前だろうか。  しかしエルザには聞き覚えがない。 「公爵ベルンハルド卿。エルザの捜している、あのヴァンパイアの名前だよ」
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