第49話 独占欲もほどほどに

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 おもわず息を飲んだ。  母を殺したヴァンパイア。  血のつながりだけのエルザの父であり、憎い仇。  なんの手がかりも情報もなく、ただ復讐のためだけに捜しつづけた男。  ギルベルトならなにかしら知っているのではないかとは考えたこともあったが、まさか本当にそうだったとは。  動揺を隠せないエルザに追い討ちをかけるように、ギルベルトはさらなる事実を口にする。 「アリシアの実父であり、俺の義父だ」 「っ、どういう、こと?」  心臓が早鐘を打つ。  思いもよらなかった事実に、一気に血の気が引いていく。  エルザは小刻みに震える指先を膝の上で握りしめる。  まだ彼の言葉を、完全に飲みこみきれていなかった。  それでも平静を装って問いかけたのは、知らなくてはいけないと思ったからだった。  ギルベルトの知るベルンハルドという男のことを。  これから語られるであろう過去と、それぞれをつなぐ因果を。 「聞いてくれる?」  エルザの真剣なまなざしに、ギルベルトはゆっくりとカップに口をつける。  喉を通りすぎる熱に、彼は深くひと息ついた。 「俺の実父は、古くからここら一帯をおさめる領主だった。ベルンハルドは、父の側近だった」
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