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「……あたしは、どうすべきなのかな、と……」
独り言のようにつぶやいた言葉は、彼の耳に届いただろうか。
息を吸いこんだ彼の仕草に、心なしか胸が苦しくなった。
やはり、彼は自分の行動を止めるだろうか。
だがエルザの思いとは裏腹に、彼女の体はギルベルトと向かいあうように反転させられる。
そして冷えきった頬を包むように、大きな手のひらが輪郭に添えられた。
不思議そうなまなざしを向けるエルザを、ギルベルトはまっすぐに見つめていた。
月明かりに照らされたアクアマリンが、澄んだ色合いできらめく。
「エルザの好きにしたらいいと思うよ。エルザがどの道を選んだとしても、俺はきみのそばにいるし、全力できみを守るから」
ギルベルトの優しさに、喉の奥が引きつる。
目頭が熱い。
エルザはごまかすように、とっさに彼の胸元に顔をうずめた。
「っ……!」
つん、と消毒液のにおいが鼻をついた。
肌に当たる違和感。
少しばかり顔を離したエルザの目の前、赤黒いものがギルベルトの肌に痛々しく線を引いていた。
それはまぎれもなく、暴走したエルザがつけたもので。
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