第51話 お手柔らかに

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「……あたしは、どうすべきなのかな、と……」  独り言のようにつぶやいた言葉は、彼の耳に届いただろうか。  息を吸いこんだ彼の仕草に、心なしか胸が苦しくなった。  やはり、彼は自分の行動を止めるだろうか。  だがエルザの思いとは裏腹に、彼女の体はギルベルトと向かいあうように反転させられる。  そして冷えきった頬を包むように、大きな手のひらが輪郭に添えられた。  不思議そうなまなざしを向けるエルザを、ギルベルトはまっすぐに見つめていた。  月明かりに照らされたアクアマリンが、澄んだ色合いできらめく。 「エルザの好きにしたらいいと思うよ。エルザがどの道を選んだとしても、俺はきみのそばにいるし、全力できみを守るから」  ギルベルトの優しさに、喉の奥が引きつる。  目頭が熱い。  エルザはごまかすように、とっさに彼の胸元に顔をうずめた。 「っ……!」  つん、と消毒液のにおいが鼻をついた。  肌に当たる違和感。  少しばかり顔を離したエルザの目の前、赤黒いものがギルベルトの肌に痛々しく線を引いていた。  それはまぎれもなく、暴走したエルザがつけたもので。
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