第51話 お手柔らかに

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◇◇◇◇◇  射撃訓練場に、銃声が反響する。  ダミーの銃弾は的確に、人型をかたどった的の頭部を貫通した。 「あいつ、来ると思うか?」  動かない的をにらみつけたまま、アルヴァーは静かにそう言った。  近づいてきた足音がぴたりとやむ。  隣のレーンで、ルティスは訓練用の銃に弾を装填し、奥の的に狙いを定めた。 「来るよ」ルティスは正面を向いたまま断言する。 「きみも見ただろう? あのときのエルザの目は、死んでいなかった」  拘束中のエルザは、生きる気力さえ失ってしまったかのようだった。  だがヴァンパイアの話をした瞬間だ。  彼女のうつろな瞳が、一瞬光を取り戻したのである。  ルティスとアルヴァーはその変化を見逃してはいなかった。  再びヴァンパイアに連れ去られたとはいえ、彼女の性格上このまま動かないはずがない。  自分たちの知るエルザはそういう女性だ。  今でもそうであってほしいと信じている。 「……そうだな」  アルヴァーはルティスの横顔を見遣ると、挑発的に口角を上げた。  再び目の前の的に銃口を向ける。  訓練場には、何発もの銃声が響き渡っていた。
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