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第52話 雑魚に構ってる暇なんて
◇◇◇◇◇
「みんなに、話しておきたいことがあるの」
午後のティータイム。
いつものダイニングルームで、ローテーブルを囲んでいる最中だった。
エルザはおもむろに言葉を発する。
彼女の真剣なまなざしに、おのずとみんなの視線が集まる。
「あたしは、あの男が……」震える声をごまかすように、乾いた空気を飲み込む。
視線を落としたエルザは、膝の上で両手をにぎり合わせて力を込めた。
「ベルンハルドが憎くてたまらない。あいつのやったことを許せそうにない。できることなら、殺したいとさえ思ってる」
静かな空間に、エルザの声だけがこだまする。
ギルベルトは、アリシアは、ダグラスは、どんな表情をしているだろうか。
なにを思っただろうか。
怖くてみんなの顔が見れない。
「……わかりましたわ」はじめに口をひらいたのはアリシアだった。
「お姉さまがそう望まれるのでしたら、わたくしもお手伝いさせていただきますわ」
鼓膜を揺らしたアリシアの言葉に、エルザはおもわず顔を上げる。
多少なりとも恨み言のひとつでも言われるだろうと思っていたのに、返された言葉はエルザの意志を尊重するかのようで。
困惑を隠せないエルザは、すぐに言葉が出てこなかった。
まっすぐに注がれるそれぞれの瞳が、優しい色をして彼女に向けられている。
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