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「ごめん、アリシア」
「お姉さまが謝る必要なんてありませんわ。ヴァンパイアにとって親子関係なんてものはそれほど重要ではありませんし、いくら父といえども、あの男のおこないには虫酸が走りますわ!」
向かいに座るアリシアが、頬をふくらませてテーブルをたたく。
彼女にもいろいろと思うところがあるらしい。
「俺も、親父の仇討ちでもしようかな」
「ギル……!」
肘かけに頬杖をつきながら、ギルベルトがいたずらっ子のように笑う。
「ちょうどクルースニクも動きだしている。便乗するか?」
ダグラスの提案に、ギルベルトは名案だとばかりに指を鳴らした。
ベルンハルドとて馬鹿ではない。
襲撃にあうとわかっていて、そう易々と通してくれるはずないのだ。
おそらく根城である城内には、大量のグールが待ち構えていることだろう。
「俺たち、雑魚に構ってる暇なんてないしね!」
目的はベルンハルドただ一人である。
数だけのグールに、いたずらに体力を奪われるわけにはいかない。
不要な戦闘はなるべくなら避けたいところである。
クルースニクがヴァンパイア退治に乗り出すというなら、それを利用しない手はないだろう。
雑魚の相手は彼らに押しつけてしまえばいいだけの話だ。
「そうと決まれば、さっそく準備に取りかからなくては! お姉さま! ちょっと付き合ってくださいまし!」
「へ? あ、ちょっと、アリシア!?」
強引に手を引かれアリシアに連れて行かれるエルザを見送って、ギルベルトは深々と息を吐いて背もたれに体を預けた。
「……これでよかったのか?」
冷めたコーヒーの残りを口に運びながら、ダグラスが落ち着いた口ぶりでそうこぼした。
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