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第3話 全部アルヴァーのせい
◇◇◇◇◇
廊下に足音を響かせながら、エルザは無造作に下ろしたままにしていた長い金髪を手早くまとめ上げた。慣れた手つきで、それを頭の上でひとつの団子状に仕上げていく。
「エルザさん、おつかれさまです!」
「おつかれさま」
収まりきらなかった毛束を耳にかけ、すれ違う隊員とひと言ふた言ほどあいさつを交わす。
帰り支度をしている隊員たちを見るに、やはりずれていたのはルティスの時計のほうではないのだろうか。
「ったく、なんだか嵌められた気がするわ……」
再度自分の懐中時計を確認しながら、エルザは小さくため息をつく。
とはいえ引き受けた仕事である。気を取り直して、エルザは軽やかな足取りでエントランスへ続く階段を降りた。
「ねぇ、あの人……」
「あれが、『ダンピール』?」
「やだこわーい」
廊下の向こうから来た女たちがささやきあう。
あきらかにエルザを指さしながら、彼女たちは蔑むようなまなざしを向け、クスクスと笑っていた。
不愉快極まりない。
エルザの無意識に寄せた眉根が、刻まれたしわをますます深くする。
――ダンピールとチーム組みたいやつなんて、いるわけないじゃない。
陰口を言われることにも、軽蔑の視線を向けられることにも慣れてしまった。世間から向けられるダンピールに対する差別など、痛いほど身に染みている。
子どものころから何度、石を投げつけられたか知れない。
エルザはすれ違いざまに女たちを一瞥すると、足早に支部をあとにする。
いらだちは、つのるばかりだった。
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