STORY 1

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芳也は完全に美咲さんの言葉を信じているようだった。美咲さんはそう言いながら、まき散らした本を拾い始めた。 「美咲がやることないよ。日中遊びまわっていたコイツがやればいいんだ」 「遊びまわるってなに?」 さすがに聞き捨てならない言葉に、私は芳也を見た。 「母さんに聞いたよ。出かけてばかりで、買い物ばかりしているらしいな。お前は変わったな」 ああ、そこも繋がっているのか。完全にふたりにはめられていることを知った。 それでも、今までの私を芳也は知っているはず。時間が経てば目を覚ましてくれる。そう信じたかったが。 「美咲、もういい。夕飯はまだだろう。外に食べに行こう」 「それなら、パパが久しぶりに芳也に会いたいって言ってたわ。芳也のお母様も呼べばいいんじゃない?」
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