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そんなふたりを見て、泣くことすらバカらしくなり、私はただ立ち尽くしていた。
「沙織、俺たちが戻るまでに片付けておけよ」
「いやよ」
思わず私は声をあげていた。
「え?」
今まで盲目的に彼をサポートしてきた私を知っているからだろう。まさかそんな言葉を聞くとは思っていなかったのか、芳也は驚いたように私を見た。
「私は悪くない、美咲さんが片付ければいいでしょ」
「え? あっ、そうよね。私が頼まれたんだもの。ごめんなさい、沙織さん」
絶対にそんなことを思っていないだろう美咲さんが、泣きそうな顔をしながらゴミ箱に手を伸ばす。
「沙織! お前……」
初めて芳也は手を振り上げ、私の頬を平手打ちした。手をあげられたことで、私の中で何かが壊れる音がした。
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