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派手な二人ではなかった私たち。穏やかでひだまりのようなお付き合いをしていたはずだった。
しかし芳也の成功が続くにつれて、彼の態度が少しずつ変わってきた。お金とステータスを手に入れることで、彼は変わっていってしまったと思う。
四年前――
大学のキャンパスは新緑がまぶしく、私は今日も芳也を待っていた。服装はいつもシンプルで、無駄な装飾は一切なし。肩にかかる黒髪も、特に手入れはしていないが、芳也はそれがいいと言ってくれていた。
『ごめん、待たせた?』
笑顔で走って来る芳也。身長175センチで爽やかな彼は、大学で外見は目立つ存在だが、性格はシャイで、とてもかわいい。
そのことに気づいて、芳也から告白をされ、私は徐々に彼に心を開いて行った。
「ううん、大丈夫だよ。それより、昨日バイトで来れなかった講義のノート」
奨学金を使って通っている芳也は、生活費も全部自分で稼いでいるため、どうしてもバイトを優先する日がある。
「沙織、本当に頼りになるよ。お前がいなかったら、俺、とっくに大学辞めてる」
「でしょ? 持つべきものはかわいい彼女?」
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