615人が本棚に入れています
本棚に追加
「簡単なやつって言っても……」
私の言葉など聞く気はないようで、芳也は無造作にリモコンを手に取るとテレビをつけた。
「とにかく、母さんが来るのは決まってるから。昼には間に合わせてくれよ」
昼までと言っても、もう一時間もない。今頃起きてきて、なにを言っているのだ。
そう思った私だったが、芳也は私の顔を見ることなくテレビを見ていた。
私は家政婦じゃないーーー。
そう思いつつも、台所へと歩き、冷蔵庫を開けた。中には、昨夜の残り物と、ほんの少しの野菜しか入っていない。これで義母のために昼食を用意しなければならない。どうして毎回こうなんだろう、と思いながらも、仕方なく私は料理を始めた。
なんとか、もうすぐ出来上がる、そう思った時、玄関のチャイムがなる。
「まだ料理並んだでないじゃないか?」
ようやくソファから立ち上がったと思うと、ダイニングテーブルに視線を向け芳也は投げ捨てるように言うと、玄関へと小走りに箸って言った。
最初のコメントを投稿しよう!