STORY 1

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マザコン。そんな言葉が最近は頭を過る。 母子家庭だから仕方がないとは思っていたが、芳也が成功してから、かなりのお金をお義母さんには渡している。 私も仕方なくついて行くと、昌子さんは派手なワンピースと完璧なメイクで玄関に立っていた。その目は私を上から下まで一瞬で見定め、何も言わないが、その視線だけで十分に私を見下しているのがわかる。 芳也の会社が軌道にのり、社長の母というポジションを手に入れてから、昌子さんも変わった一人だ。 「お邪魔します」 昌子さんの声は冷たく響き、まるで私がその家にいることが不自然だと言わんばかりだった。リビングに入ると、彼女は何気なく周囲を見回し、少しの埃や整頓の行き届いていない箇所を探すかのように、目を細める。 「芳也、元気にしてるの?」 なんとなく、私に不満があるような言い方は、最近いつものことで私は料理を運んでいた。 「仕事は順調すぎるほど、順調。もうすぐ大きい仕事も入りそうだし」 「そう」 「まあ、プライベートはコイツがきちんとやってくれないから、多少こまってるけど」 聞かすつもりなのか、声のボリュームを気にすることなく話す芳也に、苛立ちが募る。 「食事ができました」
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