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「創生魔法」
そう告げた瞬間、気づいた時にはオシャレなダイニングバーのある場所に変わっていた。
白と黒のタイルの床、ムーディーな雰囲気のオレンジ色の照明に、カウンターテーブルは焦げ茶色で美しい。深紅の椅子は全部で五つ。
「ここって……私が働いていたお店にそっくり」
「当然よ。アナタの記憶を通して、雰囲気の近い店に作り替えたのだから。お酒の種類も異世界の酒の近いのをラベルに貼っているわ。それを参考に美味しそうな『かくてるぅ』を作ってちょうだい!」
「フィル殿……。ヘレナ様、えっとその……大丈夫ですか? ワインに毒が入っていたのでしょう? トラウマに──」
「このリキュールは青空リンゴの果実酒なのね。なんて美しい色なのかしら! ああ、こっちは幸福モモと祝福の檸檬の蜂蜜酒! 朝露の葡萄酒、冷蔵庫には炭酸もあるし、フルーツの品揃えも完璧だわ。氷はうん、アイスピックでいい感じに固くなっている。数日さらに冷やして溶けにくい感じにしているわ」
「思っていたよりも、ずっと順応していますね……」
「ミハエル様、どうかしましたか?」
「いえ。楽しそうで何よりです」
前世と変わらぬダイニングバーと品揃えにテンションが上がってしまったと、少し反省しつつ、カクテルを作るための道具を確認する。
ふとお酒のラベル以外にも視界に半透明な板が浮遊しており、そこには日本語でこう書かれていた。
『珈琲・リキュール』/酒、アルコール度数21度/帝国産で香りが高いままローストした月夜珈琲豆と、バニラの甘みを調和したコクの深い。
「あれ? ……魔女様。ラベルとは別にお酒の詳しい情報が視覚化して見えるのですが……」
「ああ、私の従魔になったから得たスキルね。鑑定に近いものが顕現するなんてレアじゃない?」
「なるほど」
あ、これなら毒が入っているかどうかすぐに判別がつくわ。もしかして自分が毒殺されそうになったから、こんなスキルが?
だとしたら嬉しい。毒殺された後で飲食に対して精神をすり減らすことないのだから。何よりカクテルを作る上で、変に苦手意識やトラウマが残らなそうだわ。
魔女様たちには感謝しても仕切れないわ。せめて私の作ったカクテルを喜んで貰えるよう心を込めて作ろう。
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