4.決別とこれからカクテルのお披露目

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 シェークする回数は作るカクテルによって異なるけれど、手首をしっかり使って混ぜた後、氷を入れたコリンズグラスに注ぐ。それから冷えた炭酸水でグラスを満たして、炭酸が抜けないように、バー・スプーンで軽くステア(かき混ぜる)ことを数回したら完成! 「魔女様にはアプリコット・クーラーを」 「あら、早いし、赤い色素が鮮やかで美しいわね」 「アンズを発酵させて作るブランデーを使っています。本来は砂糖を使うのですが、蜂蜜を選びました」 「ふふっ、見た目は綺麗だけれど味は……ごくり、まあ! 美味しいわ」  一口飲んだ魔女様は、それからぐいっと飲み出す。 「アプリコットと檸檬、それと他の果実を使った蒸留酒(ブランデー)を炭酸で割っているけれど口当たりが良いし、爽やかかつフルーティーなテイストで飲みやすいわ」 「使ったのはアプリコットのブランデーと祝福の檸檬、星光の石榴シロップです。アンズの木は厳しい冬を耐えて春になると実を付けることから『強い生命力と信頼性』を、檸檬はその味わいから清涼感かつ爽やかさを。石榴はその粒の多さから『豊穣』のシンボルと魔女様の髪の色をイメージして見ました。アルコール度数は低いですが、最初に飲むのに飲みやすくほどよく甘いもの、そしてこのカクテル言葉は私の世界では『素晴らしい』という意味があります。優雅で無邪気、けれど存在感のある魔女様にぴったりかと」  アプリコットリキュールもあったけれど、ブランデーに比べて甘すぎるのでこちらを選んだのだけれど、魔女様にあっていたみたいだわ。  魔女様は半分ぐらい味わってカクテルを飲む。 「『かくてるぅ』一杯にそこまでの意味と技術を注ぎ込むなんて、異世界の人間は面白いわね。でもこの味好きよ。それに外見からの私を観察しつつ、魔女としての私のことを鑑みて選んでくれたのでしょう」 「はい。この世界の魔女様は万象であり自然の調停者でもあります。それなら果実系を使う物を好むかと」 「その認識は正しいわ。ふふっ、二杯目が楽しみだわ♪」 「ありがとうございます。ではその前に、ミハエル様のカクテルはこちらです」  冷凍庫からクラッシュアイス、ブラッドライム、ライムジュース、三日月檸檬、宵月蜂蜜、をミキサーにかけて、ソーサー型のシャンパングラスに移してミントを添えたらできあがり。 「ノンアルコールカクテル、フローズン・ダイキリです」 「これはシャーベットのような? それにライムと檸檬などの独特の香り……ん!」  ミハエル様は目を輝かせてもう一口と、グラスを傾けた。  こちらも気に入って貰えそうだわ。そんな手応えが心地よかった。
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