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シェークする回数は作るカクテルによって異なるけれど、手首をしっかり使って混ぜた後、氷を入れたコリンズグラスに注ぐ。それから冷えた炭酸水でグラスを満たして、炭酸が抜けないように、バー・スプーンで軽くステアことを数回したら完成!
「魔女様にはアプリコット・クーラーを」
「あら、早いし、赤い色素が鮮やかで美しいわね」
「アンズを発酵させて作るブランデーを使っています。本来は砂糖を使うのですが、蜂蜜を選びました」
「ふふっ、見た目は綺麗だけれど味は……ごくり、まあ! 美味しいわ」
一口飲んだ魔女様は、それからぐいっと飲み出す。
「アプリコットと檸檬、それと他の果実を使った蒸留酒を炭酸で割っているけれど口当たりが良いし、爽やかかつフルーティーなテイストで飲みやすいわ」
「使ったのはアプリコットのブランデーと祝福の檸檬、星光の石榴シロップです。アンズの木は厳しい冬を耐えて春になると実を付けることから『強い生命力と信頼性』を、檸檬はその味わいから清涼感かつ爽やかさを。石榴はその粒の多さから『豊穣』のシンボルと魔女様の髪の色をイメージして見ました。アルコール度数は低いですが、最初に飲むのに飲みやすくほどよく甘いもの、そしてこのカクテル言葉は私の世界では『素晴らしい』という意味があります。優雅で無邪気、けれど存在感のある魔女様にぴったりかと」
アプリコットリキュールもあったけれど、ブランデーに比べて甘すぎるのでこちらを選んだのだけれど、魔女様にあっていたみたいだわ。
魔女様は半分ぐらい味わってカクテルを飲む。
「『かくてるぅ』一杯にそこまでの意味と技術を注ぎ込むなんて、異世界の人間は面白いわね。でもこの味好きよ。それに外見からの私を観察しつつ、魔女としての私のことを鑑みて選んでくれたのでしょう」
「はい。この世界の魔女様は万象であり自然の調停者でもあります。それなら果実系を使う物を好むかと」
「その認識は正しいわ。ふふっ、二杯目が楽しみだわ♪」
「ありがとうございます。ではその前に、ミハエル様のカクテルはこちらです」
冷凍庫からクラッシュアイス、ブラッドライム、ライムジュース、三日月檸檬、宵月蜂蜜、をミキサーにかけて、ソーサー型のシャンパングラスに移してミントを添えたらできあがり。
「ノンアルコールカクテル、フローズン・ダイキリです」
「これはシャーベットのような? それにライムと檸檬などの独特の香り……ん!」
ミハエル様は目を輝かせてもう一口と、グラスを傾けた。
こちらも気に入って貰えそうだわ。そんな手応えが心地よかった。
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