5.二杯目のカクテルは?

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5.二杯目のカクテルは?

「ライムを含む柑橘系の香りと酸味が口の中に広がって、実に爽やかで砂糖のような甘みがありつつも酸味と絶妙なバランスが……ああ、とても美味しいです」 「ありがとうございます。ダイキリには二種類ありまして、先ほどの魔女様にお出ししたカクテルのようにシェークした飲み形のダイキリと、私がお出ししたライムジュースをベースに、クラッシュアイスをミキサーでフローズン・ダイキリがありますの。……元々、このカクテルは19世紀キューバのダイキリ鉱山で、重労働を追えた労働者たちが飲んでいたものだそうです。ラム酒とライムジュース、少しの砂糖を入れて作ったとされています。暑い日には特にフローズン・ダイキリが人気だったとか」 「19セーキはピンとこないが、労働の後の一杯ということですか。なるほどこの甘味と酸味が絶妙で、気に入りました。……それで、私が日頃の激務に疲れている意外にこのカクテルを選んだのは、フィル殿ようにカクテル言葉に繋がるのかな?」  鋭い。  神官様は頭の回転が速いだけではなく、ユーモアと鋭い観察眼あるのね。 「ご推察の通り、このカクテルは抗夫たちが厳しい環境に耐えながらも、明るい未来を夢見て口にしたとされていて、カクテル言葉は『希望』です。ミハエル様は仕事柄、今回のような面倒事を数多く経験しておりますし、このカクテル言葉と、あとは神官様の雰囲気と髪の色に合わせてみましたわ」 「それは嬉しいですね」  私の言葉にミハエル様はほんのりと頬を染めて微笑んだ。おかしいわね、アルコールは入れていないはずなのに……。 「ヒンヤリと甘味と酸味の絶妙なバランスに清涼感も加わって、お酒でなくともここまで美味しいとは素晴らしい技量です。それに蜂蜜の甘みは砂糖と違って体に沁みます。……ヘレナ様、よければ教会で働きませんか?」 「え?」 「今、教会の一部に貴族様用の絵画鑑賞サロンを用意しているのですが、昼間はお茶、夜はお酒を振る舞う事業を考えているのです。そこでこのようなカクテルがあれば、教会に通う人も増えるのではないかと思いまして!」 「教会で……私が?」 「はい。リエン教会では保護した方々が今後活躍できる職場を提供しておりまして、内職から新規事業に至るまで才能ある方を歓迎しております。特にサロンは教会へのパトロンを得るためにも、力を入れたく思っておりまして……」 「まあ、そうだったのですね!」
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