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ミハエル様が微笑んだのは、新規事業で役に立ちそうな人材の発掘に喜んだからだろう。危うく私に好意があると勘繰ってしまう所だったわ。危ない、危ない!
それにしても教会も貴族からの寄付金を得るために、サロンとか色々事業をしているのね。偽善を掲げていてもお腹は膨れない。地に足がついているいい運営方針だわ。魔女様との契約は一年だし、その後の生活を考えると悪くない。
「離縁の手続きもすぐに受理しますので、前向きに考えてはどうでしょう。当分は教会でヘレナ様の身柄は保護しておりますので部屋代、当面の食費生活費などの衣食住は教会持ちにしまして、就職してから衣食住のかかった金額を給料から差し引くようにサポートもしておりますよ」
「そんな破格の待遇……」
「ダメよ! この子は私の従魔なのだから私と暮らすの。もちろん、仕事の斡旋だってするわ」
魔女様は空になったグラスを差し出しながら、話に割り込んできた。お代わり……というよりも、次のカクテルをご所望なのね。
「教会にはあげないわ」
「そう言いますがフィル殿の従魔使いの荒さは教会まで耳に入っています。彼女のような逸材を貴方の気まぐれで潰したくはないのですが」
え?
サラッと恐ろしいワードが聞こえたのだけれど……。従魔使いが荒いって重労働時間がブラック企業も真っ青な劣悪環境? あるいは精神的なパワハラ満載?
従魔って言うぐらいだから人間としての尊厳や人権がないとか……?
「人聞きの悪いことを言わないでちょうだい。屋敷の掃除と料理を頼んだだけよ。だいたいアレは──」
「汚部屋の間違いでしょう。そもそも危険な魔導書をその辺に置いて放置していれば、魔導書もブチ切れますよ。掃除している最中に、何度従魔を本に食べられたんでしたっけ?」
「ふん。自衛できない従魔が悪いのよ」
「あのですね、フィル殿。魔導書をなんとかできるのは魔女様ぐらいですからね。一般人、従魔であっても即死ですから」
魔導書。
ファンタスティックな単語にワクワクしていたけれど、どうやら魔導書は狂犬のような危険な存在らしい。魔物じゃないかしら……。なんでそんなものが屋敷内で野放しに……。人間の使用人なら確かに死ぬわ。
思っていた以上にデンジャラス。
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