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二人が私の仕事先について舌戦が繰り広げられているけれど、この分だと魔女様の屋敷での生活を中心に決まりそうだわ。決まったら身の安全だけは絶対に確保しなきゃ。
そう観察しつつ、魔女様に二杯目のカクテルを提供すべく作る。
さきほどの甘いカクテルの次に出すのは、ジンジャー・エールを使ったライムジュースと、この世界のお酒──穀物を原料としたウォッカに近い白樺ウォトカを使う。この世界のお酒は無味無臭まではいかず独特の香りがするのだけれど、それを柑橘系のライムジュースと、ジンジャー・エールのほどよい甘さでカバーする。
白樺ウォトカとライムジュースを3:1の割合でグラスに注いで、適量のジンジャー・エールを加えて軽くステア。ライムのスライスを添えれば完成。
本来はジンジャー・エールではなく、ジンジャービールを入れるのだけれど私の元の世界日本ではジンジャービールは入手しにくかったし、こちらは甘くない。
「魔女様にお出しするのはモスコミュールというお酒です」
「あら、私にも柑橘系の『かくてるぅ』を出してくれたの」
「はい。ミハエル様がお飲みになっている時、柑橘系の香りに興味をお持ちでしたので」
「あらあら、よく見ているわ。目が良い子、気配りができる子は好きよ」
今回はロンググラスでお出ししたので、前よりも量は多いし、度数は15度と少し高めにしてみた。魔女様は口を付けた瞬間、もう一口とグッと飲む。
「んん~~~。今度は甘さを控えめにしつつ、ライムの味が利いていて最高♪」
「先ほどは甘めでしたので、少し控えつつ喉越しが良い物を選ばせて頂きました」
「しかも異世界のお酒じゃなくて、この世界の酒をここまで美味しくするなんて驚きだわ」
この世界のお酒も発展はしているが、私の前世でのお酒に比べればまだまだ発展途上なものも多い。ワインは美味しいものも多いが、ブランデーやウォッカ、ジン、ラム、ビール、ウイスキーなどはまだまだ味にムラがある。
ただリキュール系は様々な果実があるので、バリエーションがたくさんあるのよね。特に植物魔種は扱いが難しいが上手に処理すれば、とても美味しい味になるものから、神果実種、幻果実種など果実単体に美味しさが段違いだったりするし。
前世のことを思い出す前は、お酒にあんまり興味が無かったけれど、今は異世界のお酒を使った斬新かつ美味しいカクテルを作りたい!
そんなことを密かに思っている間に、私の身の振り方が決まった。
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