7.お肉に合うカクテルといえば?

1/3
前へ
/60ページ
次へ

7.お肉に合うカクテルといえば?

 メインデッシュであるローストチキンに舌鼓を打つ。柔らかくて何とも美味しい。これはご飯が進む。ライスはないので食べるのはパンだけど! 「ジューシーだわ」 「はい。シェリーを使ったカクテルも良いですが、ジントニックに合いそうな料理です」 「じんとにっく。ふーん」 「ハッ」  魔女様は興味津々のご様子。ここに来るまでに既に十杯以上カクテルを飲んでいるのに、まだ飲みたいとか、どれだけお酒好きなのか。  でもカクテルに興味を持ってくれたことが嬉しい。自分の作ったカクテルをご所望でしたら作るのも吝かではない。うん、私ってチョロいわ。 「魔女様が許可いただければ作りますが……キッチンを借りても?」 「もちろん、いいわよ。好きに使ってちょうだい。だいたいのものは揃っているはずだから♪」 「では、少しだけ待っていてください」  飛び出すようにキッチンに向かうと、後から「ふふ」と笑い声が聞こえた気がした。貴族として食事中に席に立つなど本来ならあり得ないのだけれど、よく考えたら既に離婚して『ただのヘレナ』に戻ったのだ。なら気にしなくて良い。少なくとも魔女様との食卓では許されるのだ。  キッチンはなんとも広くて収納スペースも同じだった。特にお酒のストックが多く、リキュールの数も多い。もしかしたら魔女様が自分で作っているのかしら?  そう思いつつも、目当ての酒瓶を取り出す。  ジンはトウモロコシなどの穀物を原料とした蒸留酒の一つ。元の世界では17世紀のオランダで熱病の薬として杜松(ねず)の実や薬草をアルコールに浸したところ、爽やかな風味になると発見し、様々な人が飲むようになったとか。ジンというと辛口で無色透明と前世ではされていたが、この世界のジンは真昼のトウモロコシと呼ばれる食材から作った物で、ちょっと舐めてみたけれど、辛口で少し柑橘系の香りがある。  やっぱり元の世界とは味わいが少し違うのね。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加