1.魔女様との契約

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『来年こそバーテンダーコンテストで優勝するわ!』 『自信満々だな、うちのポープは』 『創作カクテルは結構良い感じなんですよ! それにここ三年でマスターにもしごかれましたし!』 『ああ、もう一人前といっても良いだろうな』  懐かしい声。笑い声と胸が温かくなった。  一つ思い出すとまた一つ記憶が蘇る。どうして忘れていたのかしら。あんなにお酒を──カクテルを作るのが大好きだったのに。  色鮮やかで、人を喜ばせる魔法のような技術を持ったマスターが好きだった。人柄も素敵で、この人に認めてもらいたくて、早く一人前になろうと毎日カクテルの練習や勉強をしたんだった。  その後、どうなったの?  コンテストは?  マスターに認められた?  ここでも私は中途半端に人生が終わってしまったってことよね。ヘレナとして異世界に転生したのに、また何も成せずに終わってしまうなんて……。もっと早く前世の記憶を思い出していれば、この未来は避けられた? 「なるほど。アナタ、異世界転生者だったのね。どうりで珍しい魂だと思ったわ」  温かい声。私に触れた手が温かい。  人の手というよりも獣?  だれ? 今世の私(ヘレナ)にこんな美しい人との接点はなかったはず。 「あっ………」  声に出したかったのに、喉がひりついて声が出ない。瞼も重くて、姿が見えなかった。声の雰囲気からして男性? でも口調は女性で、どこかフローラルな香りがする。 「……だ……ぁ……れ?」 「ふふっ。私はゼロの魔女フィルよ。アナタ、野良魔女の毒を飲んだでしょう? 《魔女の薬》は人の死に関わる物を作ってはいけない縛りがあるから、アナタに死なれるのは困るのよ。本来なら手遅れなのだけど、今回はと・く・べ・つ」 「(私はそんなものを飲まされ……)……っ」 「眷族だと縛りが強すぎるかから、私と仮の従魔契約をしましょう? 一年の期間限定にしておいてあげる」  従魔契約?  魔女様と?  ふふっ、何だか不思議。でもそうね。……このまま死ぬのは嫌だわ。唇を動かそうにも声がでない。できる限り頷いて答えてみたけれど、伝わったかしら? 「──、──っ」 「良い子ね。契約成立。それじゃあ、よろしく私の可愛い子猫さん」 「──っ、んん」  モフモフに毛並みが触れたかと思ったけれど次の瞬間、唇と唇が触れ合う。驚いて目を開くと目の前に赤紫色の髪の美しい黒服の美女──ううん、色っぽい男の人が飛び込んできた。 「!?」
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