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2.私の契約した魔女様はオネェ系でした
次に目覚めると、消毒液と石鹸の香りのする一人部屋のベッドの上だった。しかも神官様と三角帽子を被った赤紫色の魔女様が、ベッド傍のソファに腰掛けているのが視界の端に映る。
でも可笑しいわね。今世の私に、こんな美人さんと接点はなかったはず。顔面偏差値が高すぎるし、出会っていたら絶対に覚えていると思うのよね。
それとも夢でも見ているのかしら？
「やっと起きたわね！ 喉の痛みは？ 吐き気や記憶はあるかしら？」
「……っ」
赤紫色のストレートの長い髪に、目鼻立ちが整った顔、胸元が開いている黒いドレス姿、女性っぽい色香全開のマッチョ男性という強烈な人が声をかけてきた。見ただけでオネェ系の人なのだろうと察した。
あれ、でもこの人の声……。
「フィル殿。目が覚めて早々に、そのような質問は些か不躾ではないですか？」
「あら。言うじゃない」
白銀の長い髪に聖職衣姿の儚い系美青年が窘める。少年らしい幼さが残りつつも、優しい眼差しに長い睫毛、整った顔立ちは天使みたいだわ。
「でも残念だけど、この子はもう私の従魔だもの。健康状態の確認は急務でしょう」
「じゅっ……っ」
「ああ、無理に喋らないで」
従魔！ そうだわ、私は──。
慌てて起き上がろうとして喉に痛み、いや違和感を覚えた。手で触れただけだと分からないけれど、温かさがあった。
ふとオネェ系筋肉質の偉丈夫と目が合った。アメジストのような美しい瞳に、彫刻のような美しい顔立ち。気品があって大変エレガントなのだけれど、何度見ても男性だわ。胸板が厚いし、でも私よりも女子力高そう。唇も艶々だし、手に付けている宝石やアクセサリーもお洒落で素敵。何より黒のマニキュアがカッコイイ。
この方が私を救ってくれた魔女様？ あ、魔女様と呼ばれているから女装を？
魔女様は急に私に近づき、自然の流れのように首元にキスを落とす。何かが流れ込んでくる感覚と唇の感触に、思わず声を上げてしまう。
「ひゃっ！？」
「うん、無事に声も出ているわね。それにちゃんと従魔契約の印が首周りに出ている。ミモザと柊の紋章なんて珍しいけれど。やっぱり私って天才ね」
「（き、キスは治癒魔法的な？）紋章、契約……じゃあ、あれは夢じゃないのですね」
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