2.私の契約した魔女様はオネェ系でした

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 野良魔女。  魔女教会に所属していない許可証のない魔女のことよね。基本的に魔女は強い魔力を持ち、幼い頃に魔女協会で保護したのち、魔女の内弟子となって魔女見習いとなる。もっとも魔女に至れるのはほんの一握りだとか。  この手の事件。  つまり私のように、身内から命を狙われていた人たちがいたということよね。ふと夫の歪んだ笑みを思い出し他瞬間、ゾッと背筋が凍った。  もし教会に保護されずに、屋敷で静養していたら?  今回のように助かったとしても、屋敷の使用人たちを買収して更に酷い目に遭うところだった?  心臓がバクバクと煩い。グッと手を握って動揺を隠そうとしたが甘かった。魔女様は私の手を両手で包み込む。 「そんな風に怖がる必要はないわ」 「……魔女……様」 「幸いにも、ここには離縁の専門家が揃っているし、クズ夫と別れるつもりなら、そこのミハエルがなんとかするわ」 「ええ、私たち教会は、協力を惜しみません」 「──っ」  魔女様、ミハエル様も心から私を心配してくれたことが嬉しかった。誰かに気にかけて貰うのがこんなにも温かくて、素晴らしいものだったなんて……。体調が崩れても、熱を出しても、あの屋敷の者たちは仕事が滞ると、不機嫌になって、労いや気に掛ける言葉などついぞ聞けなかった。  ヘレナの人生は一生懸命頑張りすぎて、誰かを気遣ってばかりだった。優しい言葉をかけてくれる人もいたけれど、貴族社会で弱みを見せることは足を引っ張られる隙になることも多い。気が抜けない生き方が窮屈だった。  それでも頑張ろうと思っていたのは……夫が好きだったから。そう、好きだった。  まだ気持ちの整理が付いていない部分もあるけれど、殺害を望んだ夫とやり直すきなんて選択肢はない。離縁一択だわ。
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