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『なう?(どういうつもりなの?)』
「ご主人様の安全が完璧に保証されるまでは、この姿がよろしいかと」
『なうー、なぁ?(そう……かしら。フィル様の元に戻ったほうが安全じゃない?)』
「野良魔女の襲撃ですよ。ひょっこり戻って見つかったらどうするんですか」
『なぅう!?(野良魔女に襲撃!?)』
「はい。屋敷に憑いている妖精の暴走によって、内側から屋敷の結界に亀裂が入ったのです。それに気付いた野良魔女たちが一斉に襲撃を始めて、ゼロの魔女様はその制圧をしておりました。緊急事態ですので今はここで体を休めてください」
ホテルでの生活は快適で毎日窓の外を眺めて、食事をして、丸ごと洗われて、お昼寝する……なんて怠惰な生活なの!?
このままじゃ太っちゃうわ。というかフィル様に会いたい。声が聞きたい、ギュッてされたいし、キスだって……。それにフィル様のカクテルだって作りたい。
お師匠様の話をしていて、フィル様をイメージしたカクテルを作って、自分の気持ちを込めたいって思ったんだもの! それなのにエクスは……ううん、エクスだけじゃない。魔導書のブラック、チャイ、ロイヤルまでしばらく離れたほうがいいというなんて……。しかもエクスと同じくらいのイケメン! キャリバーは屋敷に残って情報共有しているらしいけれど。
フィル様の屋敷だと人の姿になるのに、制限がかかって数分だけらしい。それが魔導書や魔法剣は不服だったとか。私を膝の上に乗せてエクスは毎日恭しく私の毛並みを撫でて世話を焼く。エクスだけではなく、人に姿になった魔導書たちもホテルに集結した。
黒い外套を羽織った彼らは、外見こそ十代に見えるけれど、実年齢とイコールにはならないだろう。
癖のある黒髪に褐色の肌のアラビアン風な美青年のブラック、ミルクティーのようなサラサラの髪に王子様のような中性的な顔立ちの爽やかイケメンにロイヤル。そして栗色の髪にメガネをかけた気弱な相場美少年!
ミステリアスな執事風のエクスに、妖艶さの色香を纏ったアラビアン風な美青年、王子様の爽やかイケメン、メガネに気弱な美少年とかすごいわ……。
魔導書で戦った時の戦いぶりから、こんなの知能が高いとは正直思わなかったのだけど、人生って何が起こるか本当に分からないものね。
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