1.魔女様との契約

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1.魔女様との契約

「あっ……あがっ!」  飲んだ瞬間、喉に衝撃が走った。うまく呼吸できず、ワイングラスを落として、その場に倒れ込む。  なんで? 呼吸が上手くできない……! 「ヘレナ! ああ、どうして! 誰か治癒術者を! 妻が死んでしまう!」 「ヒュッ……ッ」  肩まである金髪に色白の肌、高い鼻梁に知的な顔の夫は、いつ見ても美しい。夫の慌てて駆け寄る姿に「心配してくれるなんて……」とホロリとした。  結婚して二年目。  白い結婚を突きつけられたけれど、仮面夫婦として夫人の役目は果たすように言われてきた夫が、最近歩み寄ってくれるようになった。  花束にドレスなどの贈物に、一緒に食事に誘ってくれて……。最初はどういう風の吹き回しかと思ったのだけれど嫁いできてから子爵家を支えていたこと、領地運営も軌道に乗ったことを知って感謝の言葉をくださったのだ。燃えるような愛情はないけれど、それでこれから歩み寄れるかもしれない。干上がった関係に、少しだけ望みが生じて──私は浮かれていたのね。  贅を凝らした美しいパーティー会場で、流れてくる曲はどれも素晴らしいものに仕上がった。自分の誕生日パーティーを盛大にしたいと言い出したので、頭の中がお花畑だった私は今日のために頑張って予算を捻出したのだ。  最高級のワイン、料理長に頼んで食べやすいバイキング形式にして、豪華に見せるため中庭の花をアレンジして飾り、王都で有名な音楽団も呼んだ。今日集まる王侯貴族の方々と、新しい事業提案や商談が一つでも決まれば、充分に元が取れるよう手筈を整えたのに……。  旦那様の誇れる妻であるために、服装も気合いを入れてパーティーに臨んだ。旦那様とは政略結婚だったけれど、嫁いだ以上は子爵夫人として夫を支えていこう。赤ワインを飲むまでは本気でそう思っていたのに──。  どうして……こうなってしまったの? 一体……誰が……? 「ああ。ヘレナ……」
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