つ ぎ

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 凛也からの拒絶は、私の足裏を地に擦らせる。絶望だ。  めぐみとかいう女が腹立たしい。ちらりと目にした黒髪に憎悪をこめた。私はすべてを投げうって凛也に尽くしたのに。私がナンバーワンにした凛也を横取りして。  店へと引き返すことにした。待ち伏せをして、牙からの声を待つ。次は顔だ。めぐみの顔を頭ごと狩らせる。口に笑みを刻みながら、私は踵を返した。  私の行く手を遮るように、男が二人、足をとめていた。ともに目つきが鋭い。 「鈴木ミカさんですね」  いきなりフルネームで呼ばれた。二人がそろって身分証を提示する。刑事だった。  私を捕まえに来たんだ。  冷たい汗が背中を伝う。逃げても男の足には敵わない。観念したが、まったく予想外の問いを受けた。牙のことだった。  犯人の目星はまるでついていない。  街の防犯カメラには、襲撃の瞬間が映っていた。  突然、被害者の体がなくなるので、どう考えていいのか警察も困っている。  刑事たちの言葉を要約すると、こういうことだった。 「あなたが、五つの録画すべてに映っているのです。なにか知っていますか」   私は首を振り、目の前で人が血まみれになって驚いた、とだけ伝えた。  これで終わりになるかと思ったが違った。二人の刑事が、申し合わせたように私へと目を据える。 「ホストクラブに足繁く通っているようですね。よくお金が続きますね」  膝が震えた。やはり、横領を知っているのだ。牙の聞き取りは、声をかけるきっかけで、横領が本命なのだ。 「安いコースで楽しんでいますから」  見え見えの嘘をつく。この場での連行を覚悟したが、刑事はあっさりと背を向けた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加