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横領に手を染めて二か月。連続トップを獲得した凛也は、自分の店を持ちたいと語るようになった。スポンサーを探すためだろう。以前にも増して、私以外の女に目を向ける。
私に身の入らない相槌をくり返し、隣のボックスにやたらと視線を滑らせる。メロンのような乳房を揺らす女が気になるようだ。
いったい誰のおかげで、その他大勢の一人から脱出できたと思ってるんだ。王座に腰をおろせたのは、私が横領までして売り上げを伸ばしてやったからだ。私だけを見ろ。
メロンが帰り支度を始めた。私も会計を済ませる。
店を出てからは、あとをつけた。牙の声を心待ちにしながら。
牙はどうして、体のパーツを指定するのだろう。食べることが目的なら、体まるごとのほうが腹は膨れるだろうに。
もしかしたら。と、思いついたことは余りにも突拍子がなかった。
ないない。メロン女を尾行しながら首を横に振る。
でも、右足は凛也が褒めた箇所だ。腰は凛也が触った。左足のほかは、凛也が関わる。
ひょっとすると、牙は凛也好みのパーツを集めているのかも。そして繋げて、一人の女を作り出す。
継ぎはぎだらけの体を想像したら、ぶるりと背筋が震えた。
「次はもしかして」
独り言を宙に放つと。
「胸」
やっぱり。凛也の気に入ったパーツを集めている。
胸だけではつながらない。腹もついでに狩らせた。腰から伸びた二本の足と両腕、頭が地面に残った。打ち捨てられた肉の塊。
生首となったメロン女と目があった。一瞬で死んだためだからか。頬も鼻も顎も血塗られているのに、表情に苦悶の色はなかった。
私は百貨店の地下に駆け込む。視界の隅に入ったメロンを買うか迷った。でも足はとめない。やっぱりここはあれだ。
血の滴るようなローストビーフを、スライスはしてもらわず、塊で買った。マンションの扉を開けてすぐ、立ったまま玄関で丸かじりにした。
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