つ ぎ

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 出社すると、課長から小声で告げられた。同期の林が死んだと。  不自由な体にはなるだろうが、現代の医療なら十分に回復すると思っていた。有害な菌が大量に入りこみ、治療の甲斐なく果てたらしい。  通夜には義理で参列した。社葬扱いだったため、断れなかったのだ。  棺の小窓が開いていた。痩せ細り、骸骨のような顔に死に化粧が施されている。命が尽きてまで、七三分けなのが滑稽だった。  左右の腕は、一人の女から調達した。左は、凛也がプレゼントしたブレスレットをしていたから。右は、凛也が戯れで手相を見たから。  凛也は私の手相も見た。手のひらに指を滑らせ、この先の運命だとか、必ず幸せをつかむだとか、僕は愛した人の手相しか見ないだとか。その場限りの甘い言葉を述べた。  牙がターゲットの腕を奪うのを見届け、意気揚々とマンションへと帰った。あらかじめ買ってあった手羽先をグリルで焼き、骨ごとかみ砕く。細かな骨はビールで飲みくだす。美味い。  次は顔だな。誰にしよう。  と考え、その場で肉と酒を吐いた。  凛也は私の顔を気に入っている。こんな美人、見たことないと褒めちぎってくれた。  きっと、牙は私を襲う。自分を見詰めた時、私は死ぬ。
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