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「足」
突然だった。声がしたのは。
凛也は接客で、派手な女に笑顔を見せた。私はこの女がどこに住んでいるのか。あるいは、どこで働いているのかを知るためにあとをつけていた。嫌がらせをして、凛也に会いに行けなくするために。
私が店を出る時、凛也は「待っていて。今日も足がステキだね」と派手な女に言った。客ランクで一位の私を送り出す途中でのことだ。
頭にきた。凛也には文句を言わないで、女をにらんだ。太ももが半分以上出る短いスカート。素足にミュール。右の足首に赤いバラのタトゥーがあった。
だから「足」と聞こえた時、私は女の赤い刻印を見た。
見たら。
女の足が付け根から消えた。
道の真ん中で女は転がる。勢いよく血が噴き出ている。スカートのすそが、強風で千切れそうになった旗みたいに揺れていた。
私は夜の繁華街から逃げた。パンプスが脱げそうだったが、女の叫びから少しでも遠ざかりたくて、必死で駆けた。
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