03:怖々イブニング

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 打ち上げに参加したのは10人ほど。  盛り上げ役のウィルさんは、飲むペースがはやくて頬が真っ赤。あとはカメラマンさんとヘアメイクさんが話し込んでて、アシスタントさんたちも楽しげ。  それぞれ自分の近くの席の人と会話してるな、と観察していると、──パチリ。真正面の人と、目が合った。 「今日はありがとうございました」 「あ、こちらこそ……。パタンナーの奈良さん、でしたよね……?」  千佳くんって、スタッフに美形を集めてるのかな。  テラコッタ色の髪を顎先で切りそろえていて、長い下睫毛が印象的な奈良さんは、麗くんとはまた違った中性的な容姿の持ち主。  見た目ですぐ判断するわたしは、楚々とした奈良さんの様子に警戒を解いた。 「はい。今回の服、着心地どうでした?」 「あ、すごいよかったです……」  う〜。コミュ障つらい。  うまく感想を伝えられずへこむも、パッと顔を明るくした奈良さん。 「ですよね! 今回ののさんに着てもらった服、裏地が全てキュプラなんです!」 「へ、へえ……」 「シルクの光沢と似てて、肌触りがよくて、かなり高価なので値段面で揉めたんですけど──……」  おっと、目がキラキラし始めた。
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