01:憂鬱モーニング

14/19
前へ
/86ページ
次へ
──「(ん?)」  霞む視界に広がるのは、一面の黒と月明かり。  まだ意識が覚醒してないのか、ねむくてぽやぽやしてしまう。  近くにあるはずの体温を探すも感じられず、身体を起こしてあたりを見渡すと、ドアの向こうから話し声が聞こえた。 「(ちかくんでんわ……?)」  眠気に抗って、耳を澄ませる。  音を立てないようにベッドから抜け出すと、千佳くんサイズの服を着せられていることに気づいた。風邪ひかないようにかな。 「──執拗い、断る。他のやつを探せって言ってるだろ。…………あ?何度も言わせんな。……もう切るぞ。────美麗みれい」  美麗……?  誰なんだろう、電話の相手。揉めてる気がするけど名前的に女性……? もしかして好きな人?  気配を消して、覚醒しない頭でぐるぐる思考を巡らせていると、電話を切った千佳くんがドアを開けた。起きてるわたしに気づき、目を丸くする。 「どうした」 「ちかくん、となりいないから」 「悪い。仕事の電話だ」  こんな遅くに? おんなのひとと?
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加