03:怖々イブニング

6/21
前へ
/86ページ
次へ
 ヘアメイクが完了して、メインの服に着替える。  麗くんとウィルくんがデザインした服は、Aラインのシルエットのワンピースで、澄んだ夜の海の煌めきを閉じ込めたような色合い。  シンプルだけどデザイン性もあり、着心地も抜群。華やかだけど儚さもあって、ふたりがどれほど真剣に服に関わってきたのか実感した。 「メイク、着替え、終わりました!」 「お、おまたせしました……」  既に、撮影準備を終えたスタジオが、またしてもしーんと静まり返る。  麗くんやウィルくん、千佳くんまでポカンと固まるので、わたしは皆に見つめられながら、もじもじと指先に視線を落とした。 「ワ、ワンダフォー……」 「俺、絶対ののちゃんが合うって言ったじゃん。まじ天才……最高……」 「すー……。誰にも見せたくない」  謎の拍手と感嘆の吐息で迎えられつつ、わたしはスタジオのセットの完成度に驚く。  エレガントな本棚の前には、ティピーテントとたくさんのクッション、フェアリーライトとドライフラワーが天井から吊るされて、本やカップ、ギターなどの小物が、計算されて配置されていた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加