03:怖々イブニング

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 逞しい身体に両腕を回して、すっぽり包まれる。千佳くんの体温と匂いに、気が抜けて安心した。  撮影がおわったから、服やメイクに気をつける必要もない。 「モデルのわたし、どうだった?」 「宇宙一」 「がんばったよ、ほめて」 「おら、甘えな」  あまやかな音色で「えらい」と褒めて、砂糖よりも甘い手つきで撫でてくれる千佳くんを見上げれば、優しく額に口付けられた。  この穏やかで凪いた顔がみれるのは、幼なじみ特権。  へらっ、とつられて頬を緩めると、間延びした声の麗くんが「お〜い」と言って、こっちに来る。  お疲れさま、といえば、同じ言葉が返ってきた。 「お疲れ様。感動したよ、ののちゃん」 「ん?」 「モデル緊張したはずなのに、ポージングも表情も服の魅せ方も、最高で完璧だった」 「ふふ、照れちゃう。ありがとう」 「……いや、ほんとなにこれ。かっわいすぎる」  顔を片手で覆って、「は〜」と大きな息を吐いた麗くんの耳が赤い。  どうしたんだろ? と千佳くんに抱きついたまま首を傾げるけど、千佳くんもわからないと肩を竦めた。 「ボクも感動したよ! 打ち上げ! 打ち上げしよ!」  ふぁっ、びっくり。  ウィルさん、撮影の時は電池が切れたみたいに黙っていたのに、今はとんでもない声量だ。  ん? 打ち上げ……?
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