159人が本棚に入れています
本棚に追加
逞しい身体に両腕を回して、すっぽり包まれる。千佳くんの体温と匂いに、気が抜けて安心した。
撮影がおわったから、服やメイクに気をつける必要もない。
「モデルのわたし、どうだった?」
「宇宙一」
「がんばったよ、ほめて」
「おら、甘えな」
あまやかな音色で「えらい」と褒めて、砂糖よりも甘い手つきで撫でてくれる千佳くんを見上げれば、優しく額に口付けられた。
この穏やかで凪いた顔がみれるのは、幼なじみ特権。
へらっ、とつられて頬を緩めると、間延びした声の麗くんが「お〜い」と言って、こっちに来る。
お疲れさま、といえば、同じ言葉が返ってきた。
「お疲れ様。感動したよ、ののちゃん」
「ん?」
「モデル緊張したはずなのに、ポージングも表情も服の魅せ方も、最高で完璧だった」
「ふふ、照れちゃう。ありがとう」
「……いや、ほんとなにこれ。かっわいすぎる」
顔を片手で覆って、「は〜」と大きな息を吐いた麗くんの耳が赤い。
どうしたんだろ? と千佳くんに抱きついたまま首を傾げるけど、千佳くんもわからないと肩を竦めた。
「ボクも感動したよ! 打ち上げ! 打ち上げしよ!」
ふぁっ、びっくり。
ウィルさん、撮影の時は電池が切れたみたいに黙っていたのに、今はとんでもない声量だ。
ん? 打ち上げ……?
最初のコメントを投稿しよう!