03:怖々イブニング

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◇  人生初の居酒屋。  大学生や社会人で賑わっていて、アルコールの入った笑い声や話し声が、右からも左からも聞こえる。  テーブルには、焼き鳥や唐揚げ、枝豆、だし巻き玉子などの定番メニューが並んでいて、どれから食べようと悩んでるうちに、乾杯の音頭がされた。  襖で仕切られている個室みたいな席で、主役のように真ん中に座らされたわたしは、千佳くんと麗くんの間に挟まりながら、ノンアルをちびちび。  なにもかも、引きこもりにはハードルが高い。 「のーのちゃん、どれ食べたい? 俺が取るよ」 「んん、唐揚げ……?」 「唐揚げね。はい、あーん」  自分の箸あるんだけどな。麗くんも過保護だ。  食べさせてもらうか迷ってると、わたしの代わりに千佳くんが食べた。そしてなぜか「ん」と自分の箸で唐揚げをわたしの口元に差し出してくる。 「自分で食べれるよ」 「知ってる」 「は〜、器ちっせぇ」 「黙れ」  このふたり、ほんとに仲良いんだよね?  言い合いしてるふたりを傍目に、わたしは辺りを見渡してみる。個室にしてくれたのは配慮なのかな。人目が少ないおかげで、フードを外せる。
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