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麗くんは、昔から飄々としてて掴みどころがない。
本心を探るだけ無駄なので、わたしは適当に近くの焼き鳥をつまみながら、ずっと無言の千佳くんに視線を隣に向けた。
「(目、合っちゃった……)」
しかし、ばれないよう盗み見たつもりだったのに、千佳くんとばっちり視線が重なってしまう。
どこか不機嫌そうな顔に「具合悪いの?」と聞いてみれば、アルコールを呷る千佳くんは静かに呟いた。
「……懐くなって、言っただろ」
「ん? なつく?」
「麗に懐くなって条件」
「……ハッ! 忘れてた!」
「忘れてんじゃねぇ」
わたしより先に視線を逸らした千佳くんは、完全に不貞腐れている。
たしかに、麗くんに懐くなって変な条件を課されていた。冗談かと思ってすっかり忘れていたけど、この様子だと本気だったっぽい。
「麗くんは、お兄ちゃんみたいな感じで……」
「お兄ちゃん、ね」
「千佳くんの友達だから、安心しちゃって」
「俺以外は飢えた猛獣。安心すんな」
横暴な言い分って反論したら、余計に機嫌を損ねちゃいそう。
とりあえず、聞き分けのいいふりをして頷いといた。
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