03:怖々イブニング

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 麗くんは、昔から飄々としてて掴みどころがない。  本心を探るだけ無駄なので、わたしは適当に近くの焼き鳥をつまみながら、ずっと無言の千佳くんに視線を隣に向けた。 「(目、合っちゃった……)」  しかし、ばれないよう盗み見たつもりだったのに、千佳くんとばっちり視線が重なってしまう。  どこか不機嫌そうな顔に「具合悪いの?」と聞いてみれば、アルコールを呷る千佳くんは静かに呟いた。 「……懐くなって、言っただろ」 「ん? なつく?」 「麗に懐くなって条件」 「……ハッ! 忘れてた!」 「忘れてんじゃねぇ」  わたしより先に視線を逸らした千佳くんは、完全に不貞腐れている。  たしかに、麗くんに懐くなって変な条件を課されていた。冗談かと思ってすっかり忘れていたけど、この様子だと本気だったっぽい。 「麗くんは、お兄ちゃんみたいな感じで……」 「お兄ちゃん、ね」 「千佳くんの友達だから、安心しちゃって」 「俺以外は飢えた猛獣。安心すんな」  横暴な言い分って反論したら、余計に機嫌を損ねちゃいそう。  とりあえず、聞き分けのいいふりをして頷いといた。
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