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時間はあっという間に過ぎていく。
お店に滞在できるのは2時間までだから、残り30分程度。
休憩したくて、わたしはついてこようとする過保護な千佳くんを振り切り、お手洗いに逃げ込んだ。
個室の中で、疲労のため息を飲み込む。
「(楽しいけど、疲れるなぁ……)」
人との交流に怯えていたけど、優しい人ばかりで嫌な思いなど一度もしてない。
ただ、気疲れはするから、ひとりになれる空間で息抜きをしたかった。
ぼんやりと天井を見上げる。
心配性な千佳くんが、女子トイレの前で待ち構える前に戻らなくちゃ―――……
「小宮さん、二次会参加する?」
「ん〜、藺月さん帰るらしいから迷い中です」
「あはは、恋する乙女かわいい〜」
「やめてくださいよ〜」
ドアに伸ばした手を、急速に引っこめた。
そこまで鈍くもないわたしは、はやくなる心臓を両手でぎゅっと押さえる。
たぶん、この声はSEの人とヘアメイクさんだ。
「正直、振られるのはわかってるんですもん。今日の藺月さんの顔みました? 幼なじみにデレッデレ」
「告白するまではわからないでしょ。当たって砕けろだよ」
談笑しながら入ってきた2人は、誰もいないと思ってるのか話を続けてしまう。
どうしよう、個室からでていけないや。
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