03:怖々イブニング

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 時間はあっという間に過ぎていく。  お店に滞在できるのは2時間までだから、残り30分程度。  休憩したくて、わたしはついてこようとする過保護な千佳くんを振り切り、お手洗いに逃げ込んだ。  個室の中で、疲労のため息を飲み込む。 「(楽しいけど、疲れるなぁ……)」  人との交流に怯えていたけど、優しい人ばかりで嫌な思いなど一度もしてない。  ただ、気疲れはするから、ひとりになれる空間で息抜きをしたかった。  ぼんやりと天井を見上げる。  心配性な千佳くんが、女子トイレの前で待ち構える前に戻らなくちゃ―――…… 「小宮さん、二次会参加する?」 「ん〜、藺月さん帰るらしいから迷い中です」 「あはは、恋する乙女かわいい〜」 「やめてくださいよ〜」  ドアに伸ばした手を、急速に引っこめた。  そこまで鈍くもないわたしは、はやくなる心臓を両手でぎゅっと押さえる。  たぶん、この声はSEの人とヘアメイクさんだ。 「正直、振られるのはわかってるんですもん。今日の藺月さんの顔みました? 幼なじみにデレッデレ」 「告白するまではわからないでしょ。当たって砕けろだよ」  談笑しながら入ってきた2人は、誰もいないと思ってるのか話を続けてしまう。  どうしよう、個室からでていけないや。
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