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明の家が全焼してから一週間。明は学校に戻らず引っ越していったのを担任の口から雄介は聞いた。机の下で雄介はギュッ手を握った。
「先生、明はどこに行ったんですか?」
直ぐ様雄介は声をあげる。
「それはここでは言えないから。あとで職員室に来て」
みんなの前では言えないのだなと雄介は理解した。その上で自分には教えてくれるのだなと安堵もした。
担任が教室を出てから雄介はすぐに追いかける。
「どうして俺には教えてくれるんですか?」
「明くんが雄介くんはすぐに分かるから教えていいって。クラスに何人かそういう子がいる。おじいちゃんおばあちゃんの家に行ったんだよ。明くんは知っているのでしょう?」
「はい……」
何度か明と一緒に行ったこともある。だが県外だ。簡単には会いに行けない。
「ただ、明くんのお母さんの話だと家を建て直す可能性もあるそうで、将来的には戻ってきたいって」
「そうなんだ……」
そんな簡単ではないだろうと雄介も思うが、それは口にしなかった。どうせ目標があるなら、その淡い期待にかけてもいい。
「ありがとうございます」
担任に深々頭を下げて雄介は教室に戻る。絶対諦めない。そんな決意を胸に秘めて。
「お父さん、今、空き部屋あるじゃん? あそこ使っていい?」
「何に使うんだ?」
その日の夜、雄介は父親におねだりをする。駄目なら駄目でいいと打ち明ける。
「本を……置きたいんだ……」
「本? 今まで読書なんかしなかったのにか?」
「うん……」
これは駄目か思ったが父親はあっさりと頷く。
「いいぞ。明くんの影響か?」
「うん……」
あまり詳しくは言いたくなかった。口にしたら諦めるんじゃないかとぼんやりとした不安が雄介の中にある。
「本棚はいるか?」
「そこまではいいよ! 悪いし……」
「そうか。ただ本は大切にな」
父親はたまに読書はするが、本好きというほどの頻度ではない。それでも二つ返事で快諾してくれたことを雄介は嬉しく思う。
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