第2章

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 蛍様以外でシャンパンコールすることは滅多にない。それでも、ハスキーさんは笑顔で、全力で歌と語りでコールしてくれる。  力強くて、途中でギラつく目でまっすぐ見つめながらシャツをはだけて。見せつけられる盛り上がった胸筋。流れる汗。エロい。  蛍様の真ん前に立って、壁ドン。蛍様への愛と感謝を述べながら近づき、額が触れる寸前で、とびきりの笑顔。 「うひゃー!たぁっのしぃーっ!!やばっ!こんな大盤振る舞い毎回してくださるんなら、いつかナンバーワンとナンバーツーのセット指名とかありえそうっすけぇ?」  拍手喝采。今回ははやし上手のスケスケ双子がいたから、新人2人もノりやすかったと思う。この店全体がハスキーさんの声、心と同調していたみたい。  終わって、蛍様の隣にドカッと腰を下ろした彼は「やっぱ歳だなぁ。酸欠酸欠」って苦笑して蛍様の頭を撫でる。 「えっ?あ、そう、ね。ハルト君も会ってみたいのだけれど……彼、いつもいないから……」 「すみません。あいつはいつも月末は休みをもらっているんです。その代わり……俺が蛍さんを心ゆくまで楽しませますんで。……ふっ。少し顔を近づけただけなのに、こんなに真っ赤になって可愛いですね」 「ひあっ!?あ、あ、ごめんなさい。びっくりしちゃって。私が本気でハスキーさんのことを好きなの、知ってますよね?そんなことをされたら、私――」 「濡れちまうか?」 「っ!!そ、そんなこと、言わないでください。もう……ほら、乾杯がまだでしょう?皆、グラスを持って?」
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